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執筆者の写真Hideki Tani

自己満足にならない"コンセプト"の作り方

私は普段県からの委託事業などで起業準備中の方などにセミナーをすることも多い、おそらく今までに数千人の前でお話をさせていただいてきたと思う。


また、ある時期「人の話をとにかく聞く月間」と勝手に称してアパレル起業やブランドの立ち上げの相談を毎日数人ずつ1人1時間程度聞く月を作っていた。

その月だけで50名ほどの相談を受けていた。

今でも月に数名は電話で相談を受ける。

(もちろん無料で相談を受け付けているので、ご興味ある方はお問い合わせください)


その中で特に多い相談。。。

ではなく

実は多い相談は別にあるのだけれど、別の相談よりももっと重要で直した方が上手くいくんじゃないかな。。。と感じることが多い部分がある。

それがコンセプトである。



コンセプトはそのブランドの哲学であり、方向を示すものであり、共感をよぶために、ファンを作るためにとても必要なものである。

それはブランド運営側も理解していてじっくりと考えて作っているのだろうけれど、やっぱり上手くいっていない方がとても多かった、そこで今回は自己満足にならないコンセプトの作り方(ヴァレイ式)を綴っておきたいと思う。

もちろんこれが全ての答えではないし、皆さんのコンセプトが上手くいかない!と言っているわけではないことだけは予めお伝えしておきたいと思う。




 

コンセプトは必要か?



そもそもコンセプトとは必要だろうか?


正直私は絶対に必要ではないと思う。

なくても売れている商品なんて山ほどあると思うから商品が売れるために絶対に必要かと言われると不必要だと答える、しかし"商品が売れ続ける"ためには絶対に必要だと断言する。


これは世界観などの話もあるが、そもそもコンセプトがなければお客様を都度探さなくてはいけなくなり非常に不便である。

それはなぜかというとコンセプトは"この指とまれ"だからだ。


例えば誰のための商品であるとか、なんのための商品であるとかをお客様に示して「私はこんなことを考えて商品を作っています!」と指を立てる、その指をみて同じ方向性を持っているお客様が集まってその指に止まってくれるわけだ。


そして集まってくれた方は同じ方向を向いている方が多いから、そのかたに次の商品をおすすめすることで購買につながる。


しかしそのコンセプトがないまま商品を開発してそれがとてもいい商品だとして、それが売れたとする。

しかし会社を経営するにしてもブランドを続けるにしても1つの商品が売れるだけでは意味がない、売れ続ける必要があるのだ。

この指とまれがないまま偶然集まった人たちに別の商品を売ったところで別の商品を買ってくれるとは限らない。

だってそれはコンセプトではなく最初の商品に集まってきただけなのだから。

だからコンセプトは売れるためには不要だが、売れ続けるためには必要だと断言する。







 

自己満足のコンセプトとは?



コンセプトがブランドの運営に必要なのは説明したが、では上手くいきにくいコンセプトとはどんなものだろうか?


それはコンセプトが自己満足になっている場合だ。

コンセプトとはこの指とまれなのだから共感されることで初めて意味を成す。

経験から共感されるコンセプトには3つの特徴があり、その特徴をどれもバランスよく得ている場合にコンセプトが立ってくる。


そのバランスが


①できること

②やりたいこと

③求められていること


である。


逆に自己満足になっているコンセプトの多くはこの3つのうち1つ、もしくは2つしか満たしていない場合が多い。



 


①できることをコンセプトにするのは職人タイプの人に多い

例えば「職人こだわりの」とか「職人歴◯◯年の」とかそういうことをコンセプトにしているのをよく見かける。


どうしても人は自分がやってきた実績を見ていただきたいと思うものである。

しかしお客様からすると「なんだかいいものっぽい」というイメージは持てるがそれを持つことで自分がどうなるのかとか、それを購入することで得られる感動がどの程度のものなのか想像することができない。


もちろんそれを書くこと事態がマイナスになることは少ないかもしれないが、大きなプラスにはならないことが多いと思う。


またシビアな話をすると職人歴が何年だとか、どこにこだわったかは大体のお客様からすると関係ない。

こだわりがお客様のベネフィット(利益)に直接関係する場合はいいのだけれど丁寧に作っているからとか、たくさんの知識があるからとか「表に見えない部分」を表に見えるコンセプトにしても伝わらない。


意味がないと言っているのではなく、意味はあっても伝わらないのだ。

だからお客様にとって意味のない「できること」だけをコンセプトにするのはやめた方がいい。



 


②のやりたいことをコンセプトにするのは素晴らしいと思う。

やりたいことをコンセプトにすることで「自分はこの方向に向たい」という意思表示をすることができる。

つまりこの指とまれができているのだ。


しかしそれに①できることや③求められていることがついてきていないと残念なコンセプトになることが多かったり、ありきたりなコンセプトになり他のブランドと紛れてしまう場合がある。


これは職人タイプとは逆で経験が少ない人がブランドを立ち上げるときに起こりやすい。


例えば

みんなの心を明るくするためのネックレス

などである。(もちろん類似のコンセプトを悪くいうつもりはない)


みんなの心を明るくするためのネックレス。

これは実現可能性が問題である、みんなの心を明るくしたい!という思いは伝わるのだけれど①できることか微妙であるし、お客様がネックレスに「明るくなりたい」を求めているかどうか探る必要がある。


実際に以前お話をさせてもらった方の中で

「自分の作ったアクセサリーで魔法にかかっておしゃれを楽しむ自信を持って欲しい」

という方がおられた、僕はその方に

「実際に◯◯さんは魔法を使えますか?もしくは魔法は使えないけれどその商品を持つことでユーザーの方がおしゃれ頑張ろう!と思ってくれてその勇気が湧いてくる部分を魔法と呼んでいるのですか?」と質問した。


魔法が存在するかどうかはどっちでもいい。

作る本人が「存在する」と信じていて「自分の商品には魔法がかかっている」と本気で思えるのであればそれでいい。

本人が本気で魔法が使えるというのであれば、魔法を信じているというユーザーが集まってくるだろうし実際に一定数そういう顧客はいると思う。

しかし、もし魔法は実際にないと作る本人が考えているのであれば、それはできることでもなくなってしまう、ただ"やりたいこと"のコンセプトになってしまうのだ。



問題は"やりたいこと"を心の底から自分自身で信じているか。なのである。


逆に多少むちゃくちゃであっても本人が心の底から「やりたい」と思っている場合は強い。




 

③求められていること


これをコンセプトにすると強い。ように見える。


実際に顧客が求めていることをコンセプトにしていくので商品は売れやすくなる、

しかし③をコンセプトにする時に気をつけなくてはいけないのは①と②のバランスである。


というのも求められているものを作る時の多くは困りごと解決型の商品である、例えば「身長の低い人向けの」とか「子育てに悩んでいる人の」とかである。


その場合"できること" がきちんと困りごとを解決するだけのレベルに達していることが最低条件になってくる。

お客様はとても困っている、だからそのコンセプトに集まってきたのだ、

そして期待するお客様に提供する商品のクオリティが低い場合「ただ売るために作った」と思われてしまう可能性がある。


また、②やりたいことが抜けているとお客様の共感を呼ぶことができない。

せっかく集まった人を繋ぎ止めておくことができないのだ。


②でも書いたように2.は心の底から自分で思い込む必要があるのだ。

例えば背の高い人が「背の低い人に向けて」と服を作っても共感は産まない。


お客様が求めていることをコンセプトにするだけでは冒頭に書いたように、売れても売れ続けることはできない場合が多いのだ。




 

自己満足にならないコンセプトとは?


重ねてになるが私が考えている自己満足にならないコンセプトは


①できること

②やりたいこと

③求められていること


のバランスが取れているものだと思う。






自分ができる→説得力がある

やりたい→夢がある(方向が見える)

求められている→市場性がある


この3つのバランスが取れているものは非常に有効なコンセプトだと思っている。


例えば僕が尊敬するブランドコンセプトは


ALLYOURS

「着ていることすら、忘れてしまう。あなたの生活にとける服。」


これは綺麗で強烈なコンセプトだ。


①代表の木村さんと原さんが元アパレルのバイヤーであったり、商品開発をしていた過去がある

→できること


②あなたの生活にとける服

→服が着る人の障害にならないようにしたい

→やりたいこと


③着ていることすら、忘れてしまう。

→おしゃれはしたいけど動きの邪魔をされたくない

→求められている


作っている商品のクオリティといい、代表の人柄、背景といい、市場性といい、とても気持ちがいいコンセプトで後から考えるとこれしかなかったというようなものではあるが、最初から作るとなかなか出てこない。







他にも

renacnatta (レナクナッタ)

「文化を纏う」


非常にシンプルな言葉で全ての要素を満たしている。

デザイナーの大河内さんがミラノのデザイン学校を卒業していて、最初は現地のデッドストックになっていたシルクなどを使用し日本の伝統的な素材を合わせた商品を開発していた。


①デザイナーとしてミラノで経験を積んでいること

ブランド名の「レナクナッタ」は着れなくなったとか、使えなくなったとかそういう商材を活用するという意味なのだが、ミラノに拠点がある大河内さんだから現地でデッドストックを調達できる。

→できること


②文化を纏う

→レナクナッタにも共通するが、使えなくなったり消えてしまいそうな文化を生まれ変わらせて使えるようにしたい、その素晴らしさを伝えたい。

→やりたいこと


③伝統的な素材などを活用したデザイン性の高い洋服がなかった

→求められていること



正直renacnattaはずるい。

大河内さんに出会ってからコンセプト作りから逃げ出したくなったこともある。

たった5文字「文化を纏う」とブランド名を合わせてブランドの伝えたいことの全てを伝えているのだ。






 

まとめ


現在弊社ではブランドパートナー事業というものを行っている。

既にある小規模ブランドとパートナー契約を結びリソースの提供(資金、生産背景)を行っている、同時にデザイナーと一緒にブランドコンセプトを作成したり、マーケティングを行っている。


デザイナーやブランドを起こそうと考えている人の多くは


①できること

②やりたいこと

③求められていること


このどれかが抜け落ちている。

しかし今運営しているブランド2つも最初は「やりたいこと」が先行していた、


しかし、僕たちと一緒になることで「できること」を増やしている。

1人ではできなかった服作りをよりスピーディーに、高品質で行っている。


そして一緒に「求められていること」を見つけ出すために日々ディスカッションしコンセプトを進化させ続けている。



そしてruimemeでは2周年を記念して「日常に着るドレス」というコンセプトをより深めるため、よりお客様の日常にに特別感を感じていただけるために特別仕様の刺繍ワンピースを3月5日より予約販売を開始する。







またLeniaraでは「着ることで自分自身を感じてもらう」との想いを4人の子供になぞりコンセプトを作っていて、ヴァレイとして念願の子供服を2月25日21時よりballoon cuffs dressの予約販売を開始する。

子供服に続いて同じデザインの大人服を販売予定だから親子揃って「着ている自分自信を感じてもらう」ことができるかもしれない。











コンセプトを作るのはとにかく時間がかかる。

しかし一度コンセプトを作ると強烈なインパクトができ、自分自身とお客様の間に共通認識が生まれる。


そしてその言葉自身が自分自身を導くものになる。


コンセプト作りなどで悩んでいる方はぜひメッセージを送ってくださいね。

お話していいコンセプトを作りましょう。


定期購読登録もよろしくお願いします。



Hideki Tani



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